インドのフードデリバリー・クイックコマース市場は本当に競争が激しく、数多くのプレイヤーがマスを奪い合っている状況です。
今回は、前回記事「Swiggy」と同様、インドのクイックコマース市場の1プレイヤーであるZomatoをご紹介いたします。
1. 概要|Zomatoとは
Zomatoは、インドを拠点とするフードデリバリーおよびレストラン検索サービスを提供する企業です。もともとは2008年にFoodiebayとして設立され、2010年に現在の名称「Zomato」に変更されました。
Zomatoが展開するサービスは、グルメサイトとフードデリバリー、そしてクイックコマースサービスBlinkitからなります。
Zomatoは、その事業の性質から独自のインドの飲食店ネットワークを持ち、また27の都市にダークストアを展開しています。この強力なリソースを活用してフードデリバリー部門でもクイックコマース部門でも、他のサービスに引けをとらないスピード配送を実現しています。またBlinkitでは、安価な商品だけでなく据え置きのゲーム機や携帯電話といったデバイスも取り扱っており、他サービスより幅広い品揃えが特徴です。
2. 企業概要|Zomato
法人名 | Zomato |
ファウンダー | Deepinder GoyalPankaj Chaddah |
HPリンク | https://www.zomato.com/ |
設立年度 | 2008年 |
資本金 | – |
売上 | – |
本社所在地 | Gurugram, India |
従業員数 | 約5,000人(2024年時点) |
ミッション | Better food for more people. |
3. 創業の経緯、ファウンダーBIO|Zomato
Zomatoは、Bain & Companyに勤務していたDeepinder GoyalとPankaj Chaddahの二人によって2008年に設立されました。当初の名前は「Foodiebay」。インド国内のグルメレビューサイトとして始まりました。彼らはこのサービスを、Bain & Companys所属当時の社員食堂で、同僚たちがメニュー表を探し回る様子を見たことから考えついたそうです。
「Foodiebay」はFoodという単語の存在で食べ物以外の店舗(ナイトクラブなど)を取り扱うことが難しくなっていたことと、 eBayとの法的リスクを避けるために、2010年「Zomato」という名前に代わりました。
2015年にインドでフードデリバリーサービスが開始。同年、オンライン予約プラットフォームNexTableやPOS企業MapleGraph Solutionsを買収し、レストラン予約機能「Zomato Book」やPOSシステム「Zomato Base」を展開しました。
2020年、コロナの流行を受けZomatoは食料品配達サービス「Zomato Market」をローンチし、クイックコマース市場へ参戦しました。しかし、収益性の低さからこの事業は2020年6月に終了、市場から一時撤退します。
2022年に10分フードデリバリー「Zomato Instant」を試験導入し、またクイックコマース企業Blinkitを買収。再びクイックコマース市場へ飛び込むこととなります。
4.過去のラウンド概要
Swiggyはこれまで合計で3億ドル以上の資金を調達しています。
調達資金はマーケティング・新事業開拓に使われています。
Invescoは2024年4月時点で、Swiggyの企業評価を78.5億ドルとしています。
また、2024年11月にインド国立証券取引所に上場を果たしました。
直近3回のラウンド
ラウンド名 | 時期 | 調達額 | 参加投資家 |
Series I | Oct 13, 2018 | $1.96B | Ant Group |
Series I | Feb 05, 2019 | $2.07B | Glade Brook Capital |
Series I | Feb 28, 2019 | $2.06B | Glade Brook Capital |
Series J | Jan 10, 2020 | $2.91B | Ant Group, Temasek, Peak XV Partners, Info Edge Ventures |
Series J | Mar 24, 2020 | $3.26B | Baillie Gifford |
Series J | Aug 31, 2020 | $3.93B | Kora, Tiger Global Management, Fidelity Investments, Baillie Gifford 等 |
ビジネスモデル|Zomato
Zomatoは、グルメレビューサイト・クイックコマース(Blinkit)2つのメインとなるセグメントを持ちます。
①グルメレビューサイト
Zomatoの軸であるサービスです。北米やオーストラリア、イギリスやイタリアなど、幅広い地域でサービスを展開しており「世界版食べログ」とも言えます。
インド国内ではこのサービスに付随してフードデリバリーを行っており、店舗の検索・検討から注文まで地続きなことが特徴です。
②Blinkit
日用品や食料品を瞬時に配達するサービスです。基本的なモデルはZeptoやInstamartと同様です。ダークストアを自社で構え、必要な際に必要なだけ商品を配達することができます。
こちらも、ユーザーからの手数料によって収益化を図っています。
5.競合との差別化ポイント|Zomato
Zomatoの生存戦略は、強力なストア・ネットワークから生まれます。
もともとグルメサイトとしてスタートしたzomatoは、インド全域に広がる飲食店ネットワークを持ちます。また、Zomatoが引き継いだクイックコマースサービス「Blinkit」では、526ものダークストアを展開しており、このネットワーク規模はインド国内でも最大級です。この強力なネットワークを活用することで、10分以内という迅速な配達サービスの実現が比較的容易になっています。これによりフードデリバリー市場では約52%、クイックコマース市場では約46%のシェアを獲得しています。
Zomatoは両市場でトッププレイヤーではありますが、こうした事業のビジネスモデルは薄利多売であることが多く、継続的に成長をするには複合的な戦略が不可欠です。
サブスクリプションサービスのZomato GoldやBlinkit Plusを拡大し、継続的な収益獲得を目指しながら、ストア・ネットワークの拡大や配達ルートの改善などに取り組むことで、市場での地位がより盤石になっていくでしょう。今後のZomatoの戦略に注目です。
6.筆者コメント
ここまで”Zomato”について、概要を交えながらまとめてきました。調査をした上での筆者の見解は以下となります。
・市場のリーダー企業。しかし競争に飲まれない戦略が求められる。
フードデリバリー事業、クイックコマース事業で順当にシェアを維持しているZomatoですが、両市場には次々とプレイヤーが参戦。シェアの争奪戦がこれからも行われていきます。
Zomatoが天下を生き抜いていくためには、これから多くの戦略が求められていくでしょう。配達員の労働環境改善も急務の課題です。
激戦区であることからどう転ぶかわからないインドのクイックコマース事業。今後も注目です。