2020年の新型コロナウイルス感染症の流行による余波は人々に「巣ごもり」という以前のZeptoの記事で、インドのクイックコマース市場に触れました。多くの企業がこの市場に参戦しており、シェアの奪い合いは今でも続いています。Amazon IndiaやFlipkartといった大手プレイヤーも市場に参戦を果たしたことで、これから競争はさらに激化していくでしょう。
インドでのクイックコマース伸長の背景としては、デジタル化や巣ごもり需要に加え、日本でのコンビニに相当する多様な商品を扱う店舗がないことが挙げられます。日用品を気軽に揃えるなら、クイックコマースを使うのが今のインドの主流のようです。
redseerの推測によれば、2025年度にはクイックコマースの流通取引総額は60億米ドルに上るといいます。
今回は、クイックコマース市場のプレイヤーであり、インド2位のクイックコマースシェアを獲得したSwiggyをご紹介いたします。
1. 概要|Swiggyとは
Swiggyは、インドのフードデリバリー/クイックコマースを提供する企業です。
2024年11月にインド国立証券取引所に上場。初日に株価が17%近く上昇するという注目の1件となりました(参考)
Swiggyの強みは、配達ネットワークと、それによって得た店舗・ユーザー双方からの信頼にあります。フードデリバリーサービスとしては後発だったSwiggyは自社で配達ネットワークを作り、30分以内に配達ができる迅速なサービス提供に投資を続けました。
そして「正確に速く配達してくれるSwiggy」というブランディングを確立し、ユーザーのリピート率を高めていったそうです。
2020年には日用品等も取り扱うクイックコマースサービス”Instamart”をリリース。その他クラウドキッチン事業(現在はKitchens@に売却)や個人店向けECサイト事業などをリリースし、事業拡大を続けています。
2. 企業概要|Swiggy
法人名 | BUNDL TECHNOLOGIES PRIVATE LIMITED |
ファウンダー | Sriharsha MajetyNandan ReddyRahul Jaimini |
HPリンク | https://www.swiggy.com |
設立年度 | 2014年 |
資本金 | – |
売上 | |
本社所在地 | Bangalore, India |
従業員数 | – |
ミッション | 都市部の消費者に利便性を |
3. 創業の経緯、ファウンダーBIO|Swiggy
2014年にバンガロールでSriharsha Majety、Nandan Reddy、Rahul Jaiminiの3名によって設立されました。SriharshaとNandanの二人は初め、中小企業を対象とした宅配サービスプロバイダの運営に取り組んでいました。しかし事業を始めた1年後、彼らは食品業界に焦点を移しました。インドの飲食業界にフードデリバリーの強いニーズがあることは知っていました(参考)
二人はRahulをコーダーとして仲間に加え、すぐSwiggyを立ち上げることに決めました。当初は1つの地域、6人の配達担当、25の提携レストランからフードデリバリー事業がスタートしたそうです。
Swiggyは、創業より一貫して注文から配達までのプロセスの質向上に全力を注いでいます。フードデリバリー事業としては後発組でありながら、配達時間の短縮やUIの改善といった利用者の顧客体験の改善により、多くのリピーターや提携先を増やすことに成功しました。
4. 過去のラウンド概要
Swiggyはこれまで合計で3億ドル以上の資金を調達しています。調達資金はマーケティング・新事業開拓に使われています。
Invescoは2024年4月時点で、Swiggyの企業評価を78.5億ドルとしています(参考)。
また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドも出資していましたが、11月13日にインド国立証券取引所に上場しました。 初日は株価が17%近く上昇して、時価総額は約121億ドル(約1.8兆円)と、2024年世界のIPOを代表する1件になりました。
直近3回のラウンド
ラウンド名 | 時期 | 調達額 | 参加投資家 |
Series K | Jan 24, 2022 | $700M | Invesco Mutual Fund, Sumeru Ventures, 360 One, Axis Growth等 |
Series K | Aug 29, 2023 | $46.4M | P R Venketrama Raja, The Ramco Cements, Ramco Industries, Rajapalayam Mills等 |
Series K | Aug 28, 2024 | Undisclosed | Amitabh Bachchan family office |
5. ビジネスモデル|Swiggy
Swiggyは、フードデリバリー・クイックコマース(Instamart)2つのメインとなるセグメントを持ちます。
①フードデリバリー
Swiggyの根幹となるサービスです。ユーザーがデバイスを通じて料理を注文すると、提携レストラン及び配達員に情報が行き、配達員がユーザーへ料理を届けるという一般的なフードデリバリーのモデルとなります。
ユーザーがSwiggyの手数料+配達員の手数料分上乗せされた金額を出前料金として支払い、その手数料によって収益化を図っています。
②Instamart
日用品や食料品を瞬時に配達するサービスです。基本的なモデルはZeptoと同様で、ダークストアを自社で構え、必要な際に必要なだけ商品を配達することができます。
こちらも、ユーザーからの手数料によって収益化を図っています。
6. 競合との差別化ポイント|Swiggy
インドのクイックコマース分野のプレイヤーとして、Swiggyには以下の競合がいます。
- Blinkit
- Zepto
- Dunzo Daily
- BigBasket
Swiggyは近年、激戦区となったフードデリバリー事業が伸び悩んだことで、Instamartに注力する方針転換をしました。しかし前述の通り、クイックコマース市場も現在非常に競争が活発化している状況です。
そもそもクイックコマースのビジネスモデル上、プレイヤー毎に差異が出ることがほとんどないことから、継続的に成長するためにはマーケティングへの多額の投資が必須となるでしょう。Amazon IndiaやFlipkartといった資本力のある大手プレイヤーに太刀打ちすることは非常に難しいと言えます。
Swiggyがこうした競合に打ち勝つためには、コスト優位性を高め、競合と比較してより安価にサービスを提供することが有効な戦略として考えられます。
Swiggyはもともと配達ネットワークを自社で構築したこともあり、インフラストラクチャーには強みをもっているはずです。今後も継続した配達ネットワークへの投資によってさらなるコスト圧縮を図ることができれば、低価格路線による競合優位性の確保が実現できるのではないでしょうか。
7. 筆者コメント
ここまで”Swiggy”について、概要を交えながらまとめてきました。調査をした上での筆者の見解は以下となります。
・大手として堅実に成長しているが、競争激化をどう乗り越えるかが鍵となる
フードデリバリー事業は伸び悩んでいるとはいえ、現在でもSwiggyが34%のシェアを持っています。Swiggyの中で最も健全なキャッシュフローの元となる事業です(参考)。
現在注力しているInstamartがどう伸びていくかが、今後のSwiggyの明暗を分けそうです。
クイックコマース市場にはSwiggyの他にも多くのプレイヤーが参戦し、シェアの争奪戦が繰り広げられています。取引規模は2024年以降もどんどん大きくなっていくと予想されていますので、プレイヤーもさらに増えていくでしょう。
Swiggyが激戦を生き残る戦略は一体何か。インフラへの投資を中心に、同社の動向に注目していきたいです。