インターネット上で決済、取引を行うようになった現在では、いつ、誰が、何の取引をしているか追うことが難しくなっています。容易になりすましをされ、アカウントを悪用される……。そういった被害を防ぐため、インターネット上にも本人認証という概念が生まれました。
「Veriff」は、新たに簡単で、正確な本人認証を提供するエストニア発のKYC(Know Your Customer=本人確認審査)システムです。
1. 概要|Veriffとは
Veriffは、エストニアに拠点を置くKYCサービス開発企業です。
2022年には、Tiger GlobalとAlkeonが共同主導する1億ドルのシリーズCラウンドの資金調達を実施しました。現在の企業評価額は15億ドルを超えていて、エストニアのユニコーン企業の一つに数えられます。
同社が提供するサービス「Veriff」は、オンラインでの本人確認を取り扱うSaas型KYCサービスです。このサービスは、顧客がスマートフォンやPCのカメラを使用して顔と、本人が持つIDカード(運転免許証など)を同時に撮影し、本人かどうかを判断します。このサービスを支えるテクノロジーは顔認識技術と機械学習。1つの映像からいくつものデータを収集し、膨大な学習ネットワークで分析をすることで、確実に本人であることを確認します。
Veriffは主に銀行やフィンテック、オンライン詐欺対策など、本人確認が必要なシーンで利用される他、顧客のデバイスやネットワーク情報も考慮して多数のデータポイントを分析し、従来見過ごされる可能性のあるパターンや例外的データの収集も行っています。
2. 企業概要|Veriff
法人名 | Veriff |
ファウンダー | Kaarel Kotkas |
HPリンク | https://www.veriff.com/ |
設立年度 | 2014年 |
資本金 | – |
売上 | – |
本社所在地 | Estonia |
従業員数 | 500名以上 |
ミッション | デジタル界に透明性をもたらす |
3. 創業の経緯、ファウンダーBIO|Veriffの歴史
2015年、Kaarelがちょうど20歳の時に、彼はエストニアの首都タリンにてVeriffを創業しました。彼は当時、海外送金サービス「TransferWise」に勤務しており、その際に、現在の本人確認の脆弱性を目の当たりにし、Veriffを形づくるアイデアを発想します。そして、デジタル界に透明性をもたらすというミッションを掲げ、Veriffの創業に踏み出しました。Veriffははじめ、エストニアの金融サービスInbankと、同国のECサイトHansapostに導入されました。
2018年、Kaarelは米国・カリフォルニア州に拠点を置くベンチャーキャピタル Y Combinatorが開催する、3カ月間のスタートアップ・スクール「Y Combinator Winter Class 2018」を卒業。同時に770万米ドルの資金調達を受け、Veriffのブラッシュアップを図りました。
現在はエストニア国内の枠を飛び越え、48の言語サポート。世界中の企業がVeriffを導入し、最新式の本人確認を利用しています。
4.業界の動向・分析|Veriff
本人認証は、なりすまし等による犯罪を未然に防止するために、顧客と企業の双方にとって重要な業務フローとなります。最も確実な認証方法は、ログインしようとする人を直接監視することだと思いますが、インターネット上での取引ではそうもいきません。よって、あらゆる手段で、離れていても「本人」だと特定する方法が生み出されました。
現在最も普及している手段は3Dセキュア(2段階認証)でしょうか。ユーザーが、都度発行される認証コードを取引の直前に入力することで本人を確認するものです。
また「生体認証」「身分証明書の提出」といった方法もあります。Veriffはこの双方の良い部分を取り入れ、安全で早い認証方法を作り上げました。
5.競合との差別化ポイント|Veriff
前述した認証手段ですが、そのどれもにデメリットが存在します。
「3Dセキュア」は、認証までのプロセスが非常に面倒であることが挙げられます。ログインや決済の度にメールやパスコード受信機を確認し、コードを入力しなければなりません。また、通信傍受に対しても弱いです。
「生体認証」は正確に本人を特定できますが、導入コストが高額であることが多く「身分証明書の提出」は、今までならば人の目で確認しなければならず、業務工数が膨れ上がることが問題でした。
Veriffはこれらのデメリットを克服し「簡単で、安く、シンプルな」本人認証システムを作り上げました。
顔認識技術と機械学習は、同じデータモデルを流用することでコストを安く抑えることが可能です。また、認証はカメラに向かって顔とIDカードを向けるだけという、シンプルで簡単な認証方式となっています。
6.筆者コメント
ここまで、エストニアスタートアップ”Veriff”について、サービス概要を交えながらまとめてきました。調査をした上での筆者の見解は以下となります。
・本人認証のデファクトスタンダードとなる可能性を秘めたサービス
KYCサービスに最も求められることは立場によって様々に考えられると思いますが、筆者が本人認証を実際に使う立場だとすると、それはやはり「UX」だと感じます。Veriffが力をつけていった理由には、シンプルでストレスフリーな認証方式が導入できることも一因として含まれるのではないでしょうか。ユーザビリティを考える立場に立った時、Veriffのような認証方式は、これから先様々な企業が追従し、広がっていくと筆者は予想します。
近年では、金融サービスを扱うFintechスタートアップが数多く登場しています。Veriffの中小企業でも気軽に導入できる認証サービスはさらに需要を広げていくのではないでしょうか。Veriff、そしてKYCサービス業界の今後に注目していきたいです。