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エストニアユニコーンインシュアテック企業 「Zego」

2023年4月11日

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エストニアユニコーンインシュアテック企業 「Zego」

近年”ギグエコノミー” ”ギグワーカー”という言葉が社会に広く認知されるようになりました。”ギグエコノミ―”とは、インターネットを通じて単発の仕事を受注する新たな働き方のことであり、配車サービスや宅配サービスがその最たる例です。

Zegoは、ギグエコノミーの特性に着目した新たな保険システムを運営する、エストニア人発のインシュアテック企業です。

1. サービス概要|Zegoとは

Zegoは、ロンドンに拠点を置くエストニア人発のインシュアテック企業です。モビリティに特化した保険を中心に、個人保険や商業保険など多彩な保険ポリシーを仲介しています。2019年にはシリーズBラウンドにて4200万ドルを調達、2021年には企業価値が11億にも達しユニコーンとなりました。

Zegoでは、アプリケーションやwebサイトなどオンラインを介して、煩雑な手続きを踏むことなく簡単に保険に加入することができます。

Zegoにおけるもっとも大きな特徴は、このサービスによって提供される保険システムが、従来の保険システムと比べて柔軟性に富んでいることだと考えられます。

車両に関する保険の場合、ドライバーが働いているか、働いていないかの正確なステータスをタイムスタンプとして記録し、それを保険会社にリンクすることで、ドライバーが行っている仕事に適切な保険が適用されるようにするのです。これにより、作業時間や走行時間に左右されず厳格に一定の補償を用意していた従来の保険システムと比べて、ドライバーの労働時間によった、よりフレキシブルな補償を用意することができます。これはまさにギグワーカー向けのシステムと言えるでしょう。

同社はもともとモビリティに関する保険市場で事業を開始しましたが、同様に柔軟性の高いシステムで、他分野の保険市場にもサービスを拡大しています。

2. 企業概要|Zego

法人名Zego
ファウンダーSten SaarHarry FranksStuart Kelly
HPリンクhttps://www.zego.com
設立年度2016年
資本金
売上
本社所在地London, England
従業員数
ミッションビジネスを妨げる保険システムへの対抗

3. 創業の経緯、ファウンダーBIO|Zegoの歴史

Zegoの創設者兼CEOであるSten Saarは、17 歳のとき、エストニアにて学生にメモ帳を販売する会社を立ち上げました。ニッチな分野にも思えますが、彼は経営の学位取得のために勉強する傍ら、4か国で100 万米ドルの純収益を生み出すことに成功します。

彼は 2009 年にメモ帳ビジネスから離れ、2013 年に売却しました。またその頃と時を同じくしてSaarはエストニアからロンドンに引っ越します。

Saarはロンドンでフードデリバリーサービス”Deliveroo”で従業員として働く傍ら、その急成長を目の当たりにします。彼はギグエコノミーが急激に普及していることを肌で感じとり、Zego のアイデアを思いつきました。彼が同僚のHarry Franks、技術者Stuart KellyとともにZegoを創業したのは2016年。そして宅配業者や食品配達ドライバーなどといった”ギグワーカー”に対し、新時代の保険ポリシーを提供するところからZegoのサービスが始まったのです。

2018 年には事業規模を拡大し、配達ドライバーのみならず、プライベート・ハイヤータクシーのドライバーを対象とした保険ポリシーも販売を開始。2018年末までに、アイルランド・スペインへサービスの提供範囲を拡大しました。

現在では9か国でサービスが展開されており、契約件数は4000万件以上にも登っています。

4. ビジネスモデル|Zegoのビジネスモデル

Zegoの収益モデルで特筆すべきポイントは、顧客データの活用です。

従来の保険代理店は、保険会社や商品提供者との顧客データの連携に多大な事務プロセスが発生します。

Zegoではこうした顧客データを一元管理し、プロセスの多くを自動化することで、情報の連携の際に発生していた事務プロセスと、それに伴うコストを大幅に削減することに成功し、収益の最大化に繋げています。

またドライバーが働いているか、働いていないかの正確なステータスを記録するシステムも、特筆すべきポイントです。これにより、顧客それぞれの働き方にフィットしたサービスを提供することができます。今後さらに拡大していくであろうギグエコノミーでの保険市場にベストマッチしているサービスと言えるでしょう。

5. 業界の動向、分析|Zego マーケット

“ギグエコノミー”の概念は、UberやAirbnbといったギグワークプラットホームの世界的普及により、既に身近なものとなっています。筆者の身の回りにも、配達ドライバーで生計を立てている人が何人かいます。

彼らは自由な時間に働き、またいつでも好きなタイミングで仕事から離れることができます。そういった人たちに向け、年単位で高額な保険ポリシーの契約を迫ったとしても、誰一人それを結んでくれる人はいないでしょう。

Zegoが実現したフレキシブルな保険契約は、従来の保険と比べギグワーカーたちの”足”を守るのに適したサービスと言えます。

6. 競合との差別化ポイント|Zego

同様のサービスを展開している企業として、同じくロンドンに拠点を置くCuvvaが挙げられます。こちらも従量課金制の保険ポリシーを提供するインシュアテックの一つであり、こちらは完全にモビリティに特化したサービス展開を行っています。

差別化ポイントとしては、Zegoがギグワーカー向けにデザインされたサービスであり、そうした顧客に寄り添っているという点が挙げられるでしょう。

Zegoでは、ドライバーの属性や運転経験など、様々な要素を加味した上で見積りを計算します。これではCuvvaのように迅速に見積りを出すことはできませんが、その分真に顧客に合った保険を紹介することが可能となります。

また保険料が比較的リーズナブルであり、自動車保険ならば1時間あたりわずか1ポンド、日本円の感覚にして1時間200円弱で車の補償を受けることができます。こうした点も他の保険サービスと比較した場合の大きな利点になります。

7. 筆者コメント

ここまで、インシュアテック”Zego”について、サービスや業界について交えながらまとめてきました。調査をした上での筆者の見解は以下となります。

・ギグエコノミーが今後さらに浸透していくのを助けるサービスであること

ギグワーカー達は皆、被雇用者ではなく個別契約をした個人事業主です。これは、ギグワークプラットホームが彼らの身を守ってくれることはなく、自分の身を自分で守らなければならないことを意味します。

事故などの急なトラブルに対し個人が取れる対抗策として、Zegoのサービスはシステム的な面・料金的な面について他の保険サービスと比べ頭一つ優れたサービスと言えるのではないでしょうか。

今後ギグエコノミーがさらに拡大する上でZegoの利用者も増え、またZegoによってギグエコノミーがさらに浸透していくという循環もあり得るのではないかと筆者は考えます。

近年はギグエコノミー市場、モビリティ市場の発展も目覚ましく、宅配や配車サービスなどとは違ったギグワークが今後台頭するかもしれません。またそれに合わせた新しい保険システムが開発される可能性もあります。今後の市場の動向を注視する必要性がありそうです。

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記者プロフィール
岩本晴空さん
株式会社FUNS所属。同社にてメディアライター、webデザイン等を経験。現在はVR×地域活性を主軸にした研究コミュニティを埼玉県加須市で展開している。 この記者の記事一覧