デジタル技術の発達により、誰でも簡単にグラフィックデザインを作り出すことができるようになりました。この10年で多くのデジタルクリエイターが生まれ、彼らによって作成されたデザインを使用した製品が次々と誕生しています。
Gelatoは、クリエイター自身による製品・グッズ作成の需要にフォーカスし、デジタルクリエイターや起業家向けに開発されたEコマース向けの印刷プラットフォームです。
1. 概要|Gelatoとは
Gelatoは、ノルウェーのオスロに本社を置く、エストニア発のソフトウェア開発企業です。彼らが開発するソフトウェア「Gelato」は、世界最大級の印刷ネットワークとそれに係る物流ネットワークによって印刷製品をいち早く生産することができる、オンデマンド印刷プラットフォームです。生産できる製品は服やバッグ、スマホケースなど多岐に渡り、利用者はそれを自分のECサイトで販売することができます。
Gelatoは現在33か国にネットワークを持ち、発注者により近く、発注者にパーソナライズされた印刷所を稼働させることで配送時間を少なくしています。
同社の収益は、ちょうどコロナ禍にあたる2021年から2022年にかけ3倍以上に増加し、総収益は1億700万ユーロを超えました。
2. 企業概要|Gelato
法人名 | Gelato |
ファウンダー | Henrik Müller-Hansen |
HPリンク | https://www.gelato.com |
設立年度 | 2012年 |
資本金 | 1億700万ユーロ(2022年) |
売上 | – |
本社所在地 | Oslo, Norway |
従業員数 | – |
ミッション | 印刷業界の民主化 |
3. 創業の経緯、ファウンダーBIO|Gelatoの歴史
GelatoのファウンダーHenrik Müller-Hansenは2006年にTele2 Norwayを退職した後、ポルトガルでの家族旅行中に「Printing for peanuts: making the world’s highest profit margins」という雑誌の記事を読んで事業アイデアを構想し、翌年にGelatoの前身となるサービスOptimalprintを立ち上げました。これはオンライン上でグリーティングカードを簡単に作成・注文できるというものでした。
Gelatoの成功は、Henrikがソフトウェアへの投資を惜しまなかったことにあります。Henrikは印刷業界の潜在的な市場の大きさ・成長性に着目しました。その市場規模は音楽市場のおよそ50倍。彼は市場の成長性を信じ「世界中の印刷機器・印刷工場をクラウドと繋ぐ」ことで世界中の誰でもオンデマンド印刷を利用できるようにしました。これがGelatoのコアとなるアイデアで、印刷業界で大きくシェアを伸ばすことのできた要因と言えるでしょう。
4.ビジネスモデル|Gelato
上記で述べた通り、Gelatoは世界中の印刷機器・印刷工場とのネットワークを持ち、地域と密着した印刷物製造を行っています。Gelatoの革新的な点は、そのサービスがグローバルなものでありながらローカルな環境で製造をしている部分にあります。
顧客の近くで商品が製造・出荷されるため、輸送コストや輸送時間をほとんど考慮せずとも良くなり、より多くのリソースを製造にかけることができるようになります。また印刷工場は自社で保持するものではなくパートナーシップを結んだ現地企業に委託しているため、既存の市場を潰すことなくビジネスを発展させていけることも特筆すべき部分でしょう。
現在はShopify、Etsy、wixなどの他者サイトと連携できるAPIの発行も行うなど、利便性を高めています。
5.競合との差別化ポイント|Gelato
革新的ながらもシンプルなビジネスモデルにより、現在は競合も多く存在します。
Printifyは競合の中でも今最も勢いのあるサービスで、幅広い印刷対応製品のラインナップ、直観的なUIによりシェアを拡大させています。Printfulではオリジナルのデザインツールを内蔵しており、より直感的にグッズを作成できます。
これらのサービスに対しGelatoが優位に立てる点は、価格と持続可能性にあると筆者は考えます。輸送コストや輸送時間を最大限省き、サプライヤーへの高い要求水準を設定し、またそれに対しフォローアップを行うことで競合より低価格ながらも高い品質を実現しています。そして必要以上にリソースを消費せず、現地のサプライヤーと協力していくことでGelato自身も、係るすべてのネットワークにもサステナビリティを担保しています。
6.筆者コメント
ここまで、ユニコーン企業”Gelato”について、サービス概要を交えながらまとめてきました。調査をした上での筆者の見解は以下となります。
・クラウドベースの民主的サービスのモデルケース
様々な情報やリソースが海を越えてやりとりされる現代、世界中の誰もが等しく受けられるようなサービスが求められています。どこに住んでいてもほとんど差がなく、簡単に素早く印刷サービスにアクセスできるGelatoは、そういった観点から非常に”民主的”なサービスと言えるのではないでしょうか。
年代や地域間での情報やリソース格差は年を経るごとに加速的に広がっていくでしょう。そんな現代において「どの国でも、誰でも簡単に受けられるサービス」が力をつけることができれば、格差は改善していくでしょう。
クラウドベースのアプリケーションの普及が産んだ民主的なサービスであるGelato。彼らの後を追い、次に”民主化”を達成するのはどんな市場なのでしょうか。