「脱炭素社会」というキーワードは、多くの国で”EVカー”の台頭を後押ししているようです。
EVの静かでパワフルな加速を不気味がる人も一昔前は多くいた様に思いますが、今では街中に充電ステーションをしばしば見かけるなど、順調に市民権を得ているように思います。
ガソリン車より燃費が良いというメリットもあるため、環境・エネルギー問題的観点からすると、各メーカーに普及を頑張っていただきたいところですね。
]今回取り上げるErisha E Mobilityは、インドを中心に活動する電動モビリティ(=EV)製造会社です。
1. 概要|Erisha E Mobilityとは
Erisha E Mobilityは、インドのニューデリーに本社を置く、同国の電動モビリティ製造メーカーです。「Rana Group」と呼ばれる、土木建設、電力部門、上下水道、地方公共事業、石油・ガス産業などを手がけるグループの一員であり、電動二輪車や電気自動車、電気バスなど、様々な種類のモビリティを開発・製造しています。
Erisha EVは、自分たちの製品を”EV革命”の最前線に立つブランドとして位置づけており、電化・環境保護にも非常に意欲的な企業です。電動モビリティだけでなく、燃料電池やグリーン水素/アンモニア(=CO2を排出せずに製造された水素やアンモニアのこと)、水素貯蔵といった分野も研究しており、イノベーションによる環境にやさしいモビリティの実現を目指しています。
2. 企業概要|Erisha E Mobility
法人名 | Erisha E Mobility |
ファウンダー | – |
HPリンク | https://www.erishaev.com/about-us |
設立年度 | 2022年 |
資本金 | – |
売上 | – |
本社所在地 | New Delhi,India |
従業員数 | – |
ミッション | インドの交通機関をスマートで環境に優しいものにする |
3. 創業の経緯、ファウンダーBIO|Skeleton Technologies
Erisha EVの生い立ちについて、多くは明らかになっていません。同社は2022年にRana Groupの一員として誕生しました。Rana Groupはエンジニアリングサービスを基盤とする事業グループで、土木建設、電力部門、上下水道、地方公共事業、石油およびガス産業、その他の土木インフラ サービス、農業機器、防衛など、非常に多岐にわたる分野でターンキーソリューションを提供しています。
Erisha EVはその一部として、モビリティの研究開発を行う会社として設立されました。EVメーカーの参戦としてはやや遅めではありますが、電気バスの開発や、燃料電池モビリティの研究など、先駆的なエンジニアリングサービスとしてのポジショニングを取っています。
Erisha EVは2023年12月8日にウッタラーカンド州政府とMOUを締結しました。これには1500億ルピーを投資して”EVパーク”を設立することや、同州にEV充電スタンドを100か所設置することなどが盛り込まれています。
4.過去のラウンド概要
Erisha EVはまだ投資ラウンドを経験していません。
同社はRana Groupの一員として、同社の投資によって設立されて間もない企業となります。
ラウンド名 | 時期 | 調達額 | 参加投資家 |
Series A | |||
Series B | |||
Series C | |||
Series D |
5.業界の動向、分析|Erisha E Mobility
「脱炭素社会」を取り巻く世界の動向は、Skeleton Technologiesでも取り上げました。
世界は「電気で動くモノ」に対して、強く興味を惹かれています。
しかし、こと”EVカー”に焦点を絞ってみると、成功している企業はほとんどありません。なぜでしょうか。理由は様々考えられますが、一番大きいのは「見込み販売数に対する充電スタンドの少なさ」ではないでしょうか。
EVに興味を示す人々は、ほとんど口をそろえて”充電に対する不安”を一番の不安要素に挙げるでしょう。
自宅に充電設備を設置できれば良いのですが、そうはいかない人も多数いるはずです。こうした人々に応えるのが公共設備としての充電スタンドですが、一から全国にスタンドを張り巡らせるには途方もない時間がかかるでしょう。インフラ整備が追いつかない速度を超えて車を売ることはできなかった、というのが”EV失敗”の中身ではないでしょうか。
上記でも述べたように、Erisha EVはこの問題に対して、ウッタラーカンド州と提携を結んでインフラ整備を推進するというアプローチを取りました。これにより、ウッタラーカンド州でのEVシェアは伸びていくことが予想されます。他州でもインフラ整備がうまくいけば、インド国内のEVシェアは大きく伸びるでしょう。
6.筆者コメント
ここまで、インドのモビリティ製造企業”Erisha EV”について、概要を交えながらまとめてきました。調査をした上での筆者の見解は以下となります。
・ロビイングを通してしたたかにEVシェア拡大を狙う企業
ただ「脱酸素」「環境貢献」を謳うだけでは電気自動車を売ることはできないことが、ここ1~2年で判明してきたように思います。
大切なのはそれを使う人の生活基盤です。彼らの生活圏内だけで利用が完結できなければ、売るのは難しいでしょう。
Erisha EVは初期投資としてEV充電スタンド100か所分の資本を失いますが、EVシェア拡大によってそれ以上の利益が見込める未来を見通しているはずです。
次世代のモビリティを製造する会社に注目する時は、そのモビリティを利用する人と、それを取り巻くインフラについても考えているか見極めることも重要なポイントではないでしょうか。Erisha E Mobilityは、インドを中心に活動する電動モビリティ