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世界をリードする大手気象情報会社 Tomorrow.io

2023年3月29日

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世界をリードする大手気象情報会社 Tomorrow.io

tomorrow.ioは、過去、リアルタイム、未来の天候によるビジネスへの影響を考慮したAIによる気象情報サービスを提供しています。

1.サービス概要|Tomorrow.ioとは

Tomorrow.ioは様々なソースから収集した気象観測データを分析し、気象予測を幅広い形態で提示するプラットホームを提供しています。

Tomorrow.ioが提供する気象予測データには二つの大きな特徴があります。

一つ目は一般的な気象予報と異なり、顧客が使いやすいよう各々の顧客に対応した実用的な形態で気象データを提供することです。

そして、二つ目は公的機関が設置している気象観測所で観測しきれない地点の気象データを収集して分析に活用している点です。

一つ目について、Tomorrow.ioは上の画像のように顧客の様々な気象情報用途に適した形態で気象情報を提供しています。また二つ目のデータ収集に関して、従来の気象予測は主に気象観測所が提供する情報をもとにして行われていますが、気象観測所は設置場所が少なく観測可能な範囲が限られており、特に発展途上国や人口密度の低い地域が死角となっています。

加えて、衛星画像は雲に遮られて情報が読み取れないこともあったりと、気象観測所が提供する気象データは精度の高い気象予測を行うのに十分なものではありません。実際、人口1,840万人を抱えるインドの巨大都市ムンバイには気象観測所が一つしかないために正確な気象データが不足していることが問題となっています。

Tomorrow.ioはこのような問題にソフトウェアで取り組んでいます。例えば、携帯電話の電波塔と携帯端末間で送受信される無線信号と天候の関係性を分析し、その分析データに基づいて気象予測を行うことにより、従来の観測地点の不足という問題を解決しました。

また、降水量は測定が難しいため、降水量を宇宙から観測するため同社は現在32基のレーダーを搭載した人工衛星を開発中です。(NASAは全球の降水測定が可能な衛星を打ち上げているがその再訪率は高くない)

(1970年から2019年までの気象災害の影響。上段は気象災害の発生件数、下段は経済損失(500は5000億ドル、1,000は1兆ドル) 出典:世界気象機関(WMO)2021年報告書)

同社によると世界中の70%のビジネスは天候に影響を受けているにも関わらず、従来の気象予報は正確なものではなく、経営者にとって気象予報データを基に行動を起こすことはリスクが高いと悩みの種になっていました。これらTomorrow.ioの取り組みは、経営者にリアルタイムで実用的かつ信頼性の高い気象データを提供し、経営者が抱えるペイン解決の一助となります。Tomorrow.ioはUber、Delta、Ford、National Gridなど1000を超える世界中の国や企業に気象情報を提供しています。

Tomorrow.io顧客一例(公式HPより)

2.企業概要|Tomorrow.io

法人名Tomorrow.io
ファウンダーShimon Elkabetz, Itai Zlotnik, Rei Goffer
HPリンクhttps://www.tomorrow.io/
設立年度2016年
資本金
売上
本社所在地ボストン(米国)
従業員数101-250人
ミッション最高の情報と見識を提供し、国や企業、個人を天気に関する問題解決に導くこと
ホームページ、LinkedIn、Crunchbase, Craft.coより筆者作成

3.創業の経緯、ファウンダーBIO|Tomorrow.ioの歴史

Tomorrow.ioはShimon Elkabetz氏、Itai Zlotnik氏、Rei Goffer氏の三人によって設立されました。

彼らはイスラエル軍の退役軍人という共通した経歴を持ち、それぞれハーバード大学とMIT在学中にClimaCell(現在のTommorow.io)を立ち上げました。

Tommorow.ioのCEOであるShimonは、ベングリオン大学で経済学の学士号をハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得しており、イスラエル空軍従事中に瀕死の重傷を負った経験から天気の重要性に気付き、現在のビジネスモデル着想のきっかけとなりました。

また、CCOのItaiは、テルアビブ大学で電気工学の学位をMITスローン・スクール・オブ・マネジメントでMBAを取得しており、イスラエル国防軍のエリート部隊に6年間所属後、アップル社のソフトウェアエンジニアとしてモバイル製品のメモリハードウェアに関連する技術の指導と実装を担当した経歴を持ちます。

CSOであるRei、はベングリオン大学で経済学の学士号をMITスローンでMBAを、ハーバード大学JFKスクールオブガバメントで行政学の修士号を取得しており、専門知識を生かしてTommorow.ioの研究開発プロジェクトの事業管理を行っています。

4.過去のラウンド概要|Tomorrow.ioの調達情報

Tommorow.ioの総調達額は$183.9Mです。

2018年4月にはソフトバンクグループの自然エネルギー(再生可能エネルギー)事業者であるSBエナジーが出資しており、2020年にはシンガポールでAPACオフィスを開設したり日本法人を立ち上げたりと、日本市場にも積極的に参加しています。

ラウンド名時期調達額主な参加投資家
Seed RoundMay 1, 2017$5MProject 11 Ventures, Square Peg Capital
Series ANov 27, 2017$15MCanaan Partners
Series BOct 4, 2018$57M12Clearvision Ventures, SoftBank
Venture RoundApr 1, 2019$7M
Series CJul 28, 2020$23MPitango Venture Capital, Square Peg Capital
Series DMar 30, 2021$77MStonecourt Capital
CrunchBaseより筆者作成

5.業界の動向、分析|Tomorrow.ioへの今後の期待

2015年にフランスで開催されたCOP21で温暖化や異常気象が取り上げられたことをきっかけに気象への関心が高まり、以降気象情報サービス業界も拡大傾向にあります。

2021年時点での気象情報サービス市場規模は17億ドルで、異常気象の増加や再生可能エネルギーの普及、スーパーコンピューターの性能向上などの要因を踏まえ、2026年には27億ドルに増加すると見込まれています。

(https://www.dreamnews.jp/press/0000260649/)

日本国内では1995年の民間による一般向け気象予報解禁以降、気象予報業務許可者として気象庁から認定を受けた事業者は、個人、放送局などを含め約60社に達しています。

財団法人の日本気象協会を除き、気象予報を本業としてエンドユーザーにサービスを提供する企業としてはウェザーニュースが最も大きな存在感を示しています。

https://www.nikkei.com/telecom/industry_s/0857

6.競合との差別化ポイント|Tomorrow.ioの特徴

Tommorow.ioの強みはデータ収集力と独自の気象データ提供方法です。以下の表に他機関との気象データサービス内容の比較を示します。

Tommorow.io他機関
データ解像度300-500m2000-4000m
インプット更新時間1分5-30分
データソース気象観測所、衛星、コネクテッドカー、ドローン、航空機、船舶、スマートフォン、携帯基地局など気象観測所、衛星
地上の実気象との相関性90%以上50%程度
アウトプット更新時間1分60分以内
データの観測地地上レベル雲レベル
公式HPより)

例えば、Tommorow.ioと気象庁(日本)、日本国内最大手のウェザーニュースとの比較は以下のようになります。

Tommorow.io気象庁ウェザーニュース
データ解像度 300-500m5000m1000m 
データソース気象観測所、衛星、コネクテッドカー、ドローン、航空機、船舶、スマートフォン、携帯基地局など気象観測所、衛星気象観測所、衛星、独自の観測機網(3000箇所以上)、ユーザーによるリポート
地上の実気象との相関性90%以上80%程度90%以上
アウトプット更新時間1分3時間5分
データの観測地地上レベル雲レベル地上レベル
(各公式HPより筆者作成)

一方、Tommorow.ioと同様に気象データを用いて提供されているサービスとして、UNDP(国際連合開発計画)によるプラットホームDigital XにClimate TRACEというものがあります。Climate TRACEではWattTimeによる技術提供の元、各国の温室効果ガス排出量と削減努力をモニタリングしています。以下、Tommorow.ioとの比較一覧です。

Tommorow.ioClimate TRACE
データソース気象観測所、衛星、コネクテッドカー、ドローン、航空機、船舶、スマートフォン、携帯基地局など衛星
データ収集頻度1分数日
データ解像度300-500 m温室効果排出源
(各公式HPより筆者作成)

上の表からTommorow.ioはClimate TRACEよりも膨大なデータを収集していることが分かります。この違いは、Tommorow.ioが様々な顧客のニーズに対応して分析したデータを提供しているのに対し、Climate TRACEは温室効果ガスの測定に目的を絞っていることに起因していると考えられます。

7.筆者コメント|まとめ Tommorow.io

ここまでTommorow.ioのサービス、業界動向についてまとめてきましたが、筆者の見解としては以下となります。

■注目される環境問題が鍵

環境問題に注目が集まり持続可能な社会の構築が求められる中、正確な気象情報の確保とその利用ニーズは今後ますます高まると予測されます。そのような背景を踏まえ、気象情報を顧客が使いやすい形で分析して提供するシステムを構築しているTommorow.ioは、今後より活躍の場が広がるでしょう。

実際、日本国内最大大手のウェザーニュースにおいても最も好調な事業は欧州での気象データを基に船舶に最適な航路情報などを提供するサービスで、企業が如何に気象データに基づいた汎用性の高い情報を求めているかが伺えます。Tommorow.ioは日本国内への進出にも積極的であるため、国内においてもTommorow.ioの名前を目にする機会が増えるでしょう。

参考

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記者プロフィール
齊藤大将さん
株式会社シュタインズ代表取締役。 情報経営イノベーション専門職大学客員教授。 エストニアの国立大学タリン工科大学物理学修士修了。大学院では文学の数値解析の研究に従事。VR学校(私立VRC学園)やVR美術館を創作。CNETコラムニストとしてエストニアとVRに関する二つの連載を持つ。 この記者の記事一覧

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